双六の上手といひし人にその行を問ひ侍りしかば
一言でいうと
勝とうと急ぐより、負けにつながる手を避け続けるほうが、最後に残る。
原文
双六の上手といひし人に、その行を問ひ侍りしかば、
「『勝たん』と打つべからず。
『負けじ』と打つべきなり。
『いづれの手か、とく負ぬべき』と案じて、
その手を使はずして、
一目なりとも遅く負くべき手につくべし」と言ふ。
道を知れる教へ、身を治め、国を保たん道も、
またしかなり。
現代語訳
双六の名人と呼ばれた人に、その勝負の方法を尋ねたところ、こう言った。「勝とうと思って打ってはいけない。負けまいと思って打つべきだ。どの手を選べば早く負けてしまうかを考え、その手を使わず、たとえ一目でも負けるのが遅くなる手を選ぶのがよい」。道をよく知る者のこの教えは、自分の身を治め、国を保つ道にも、そのまま当てはまる。
全244段の目次
底本: 烏丸光広本『徒然草』校訂本文(やたがらすナビ・CC BY-SA 4.0)