寺院の号さらぬよろづの物にも名を付くること昔の人は少しも求めず
一言でいうと
奇抜な名前や珍説で才気を見せたがるのは、かえって浅さを表してしまう。
原文
寺院の号、さらぬよろづの物にも、名を付くること、
昔の人は、少しも求めず、ただありのままに、
やすく付けけるなり。
このごろは、深く案じ、
才覚をあらはさんとしたるやうに聞こゆる。
いとむつかし。
人の名も、目慣れぬ文字を付かんとする、
益なきことなり。
何事も、めづらしきことを求め、異説を好むは、
浅才の人の必ずあることなりとぞ。
現代語訳
寺院の名をはじめ、あらゆる物に名を付ける時、昔の人は少しも凝ったりせず、ありのままに、わかりやすい名を付けたものである。近頃の名は、深く考え抜いて、才気を示そうとしているように聞こえる。実にわずらわしい。人の名にも、見慣れない漢字を付けようとするのは、何の役にも立たない。何事につけても珍しいものを求め、変わった説を好むのは、学の浅い人が必ずすることだという。
全244段の目次
底本: 烏丸光広本『徒然草』校訂本文(やたがらすナビ・CC BY-SA 4.0)