そらんじ徒然草

身死して財残ることは智者のせざるところなり

一言でいうと
死後に財産を残して争わせるより、生きているうちに譲るべきだ。
原文
身死してたから残ることは、智者のせざるところなり。
よからぬ物、貯へ置きたるもつたなく、よき物は、
「心をとめけん」とはかなし。
こちたく多かる、まして口惜くちをし。
「われこそ得め」など言ふ者どもありて、
あとに争ひたる、さま悪し。
後はたれにと心ざす物あらば、生けらんうちにぞゆづるべき。
朝夕、無くてかなはざらん物こそあらめ、そのほかは、
何も持たでぞあらまほしき。
現代語訳
自分が死んだあとに財産を残すことは、知恵ある人のしないことである。つまらない物を貯めておくのも愚かだし、よい物なら「ずいぶん執着していたのだろう」と感じられてむなしい。やたらと多く残すのは、なおさら残念である。「自分こそがもらおう」などと言う者たちが現れ、死後に争う姿は見苦しい。後には誰にと考えている物があるなら、生きているうちに譲るべきだ。朝夕の生活になくてはならない物はともかく、そのほかは何も持たずにいたいものである。
全244段の目次
底本: 烏丸光広本『徒然草』校訂本文(やたがらすナビ・CC BY-SA 4.0)