人の終焉のありさまのいみじかりしことなど人の語るを聞くに
一言でいうと
立派な最期を飾って語るより、本人の信念と心の静けさを尊ぶべきだ。
原文
人の終焉のありさまのいみじかりしことなど、
人の語るを聞くに、ただ、
「閑かにして乱れず」と言はば心にくかるべきを、
愚かなる人は、あやしく、異なる相を語りつけ、
言ひし言葉も、振舞ひも、
おのれが好むかたに讃めなすこそ、「その人の日ごろの本意にもあらずや」と思ゆれ。
この大事は、権化の人も定むべからず。
博学の士もはかるべからず。
おのれ違ふ所なくば、人の見聞にはよるべからず。
現代語訳
ある人の最期がすばらしかったという話などを聞く時、ただ「静かで、心を乱さなかった」と言うなら奥ゆかしいのに、愚かな人は不思議で異様な様子を付け加えて語り、その人が口にした言葉も振る舞いも、自分の好みに合わせて褒め立てる。それを見ると、「それは故人が日ごろ望んでいたこととは違うのではないか」と思われる。この生死の大事は、仏の化身でさえ決めつけられず、博学な人にも推し量れない。自分の信念に間違いがないなら、他人の見聞や評判に左右されるべきではない。
全244段の目次
底本: 烏丸光広本『徒然草』校訂本文(やたがらすナビ・CC BY-SA 4.0)