そらんじ徒然草

明雲座主相者にあひ給ひておのれもし兵仗の難やあると

一言でいうと
災難を恐れて尋ねる心そのものが、すでに災難の兆しである。
原文
明雲座主めいうんざす相者さうじやにあひたまひて、
「おのれ、もし、兵仗ひやうぢやうの難やある」と尋ね給ひければ、
相人さうにん、「まことにその相おはします」と申す。
「いかなる相ぞ」と尋ね給ひければ、
傷害しやうがいの恐れおはしますまじき御身にて、
かりにもかく思し寄りて尋ね給ふ。これ、
すでにその危ぶみのきざしなり」と申しけり。
はたして、矢に当りて失せ給ひにけり。
現代語訳
明雲座主が人相見に会い、「自分には、もしや武器で傷つけられる災難があるだろうか」とお尋ねになった。人相見は「確かに、その相がおありです」と答えた。「どのような相か」と尋ねると、「本来なら傷つけられる恐れなどないご身分なのに、仮にもそのようなことを思いついてお尋ねになる。それがすでに、危難の兆しです」と申し上げた。明雲座主は、果たして矢に当たって亡くなった。
全244段の目次
底本: 烏丸光広本『徒然草』校訂本文(やたがらすナビ・CC BY-SA 4.0)