そらんじ徒然草

盃の底を捨つることはいかが心得たるとある人の尋ねさせ給ひしに

一言でいうと
杯の酒を少し残すのは、口をつけた箇所をすすぐための酒席の作法だった。
原文
「盃の底を捨つることは、いかが心得たる」と、
ある人の尋ねさせたまひしに、
凝当ぎようたうと申しはべるは、底に凝りたるを捨つるにや候ふらん」と申し侍りしかば、
「さにはあらず。魚道ぎよだうなり。流れを残して、
口のつきたる所をすすぐなり」とぞ仰せられし。
現代語訳
「杯の底の酒を捨てるという作法を、どう理解しているのか」と、ある方がお尋ねになったので、私は「凝当というのは、底に沈んで固まったものを捨てるという意味でしょうか」と申し上げた。すると、「そうではない。魚道という作法だ。酒を少し残しておき、口をつけたところをそれですすぐのだ」とおっしゃった。
全244段の目次
底本: 烏丸光広本『徒然草』校訂本文(やたがらすナビ・CC BY-SA 4.0)