世の人あひ会ふ時暫くも黙止することなし
一言でいうと
人は顔を合わせると黙っていられず、害の多い無駄話を無駄だとも気づかず語り合う。
原文
世の人、あひ会ふ時、暫くも黙止することなし。
必ず言葉あり。
そのことを聞くに、多くは無益の談なり。
世間の浮説、人の是非、自他のために、失多く得少なし。
これを語る時、互ひの心に、
「無益のことなり」といふことを知らず。
現代語訳
世間の人は、誰かと顔を合わせると、少しの間も黙っていられない。必ず何かを話す。その内容を聞くと、たいていは役に立たない話である。世間の根拠のない噂や、人への批評は、自分にも他人にも損が多く、得るものが少ない。それを語っている時、互いの心には「これは無駄なことだ」という自覚がない。
全244段の目次
底本: 烏丸光広本『徒然草』校訂本文(やたがらすナビ・CC BY-SA 4.0)