城陸奥守泰盛はさうなき馬乗りなりけり
一言でいうと
達人は、素人なら見過ごす小さな動きから危険な性質を見抜く。
原文
城陸奥守泰盛は、さうなき馬乗りなりけり。
馬を引き出ださせけるに、
足を揃へて閾をゆらりと越ゆるを見ては、
「これは勇める馬なり」とて、鞍を置き替へさせけり。
また、足を伸べて閾に蹴当てぬれば、
「これは鈍くして、誤ちあるべし」とて、乗らざりけり。
道を知らざらん人、かばかり恐れなんや。
現代語訳
城陸奥守泰盛は、並ぶ者のない馬術の名人だった。馬を引き出させた時、足をそろえて敷居をゆったり越えるのを見ると、「これは気の強い馬だ」と言って鞍を別の馬に置き替えさせた。また、足を伸ばして敷居に蹴り当てると、「これは鈍く、事故を起こすだろう」と言って乗らなかった。その道を知らない人に、これほど慎重に恐れることができるだろうか。
全244段の目次
底本: 烏丸光広本『徒然草』校訂本文(やたがらすナビ・CC BY-SA 4.0)