よろづの道の人たとひ不堪なりといへども堪能の非家の人に並ぶ時
一言でいうと
不器用でも本職として慎重に続ける人は、器用さに任せて勝手に振る舞う素人に勝る。
原文
よろづの道の人、たとひ不堪なりといへども、
堪能の非家の人に並ぶ時、必ずまさることは、
たゆみなく慎しみて軽々しくせぬと、
ひとへに自由なるとの等しからぬなり。
芸能・所作のみにあらず、おほかたの振舞・心づかひも、
愚かにして慎しめるは得のもとなり。※1
巧みにしてほしきままなるは、失のもとなり。
本文について
- ※1得のもと烏丸本では「徳のもと」。ほかの諸本・注釈書の本文に従いました。
現代語訳
どの道でも、その家の専門家は、たとえ腕が未熟でも、上手な素人と並べば必ず勝るところがある。いつも油断せず、慎重で軽々しく行わない専門家と、ただ自由気ままにする素人との違いである。芸や作法だけの話ではない。ふだんの振る舞いや心づかいでも、愚かであっても慎み深いことは成功(得)のもととなり、巧みであっても思うままに振る舞うことは失敗のもととなる。