今日はそのことをなさんと思へど
一言でいうと
予定は必ず外れる。「思い通りにならない」とだけは、思い通りになる。
原文
「今日はそのことをなさん」と思へど、
あらぬ急ぎまづ出で来てまぎれ暮らし、
待つ人はさはりありて、頼めぬ人は来たり。
頼みたる方のことは違ひて、
思ひよらぬ道ばかりはかなひぬ。
煩はしかりつることはことなくて、
やすかるべきことはいと心苦し。
日々に過ぎ行くさま、かねて思ひつるには似ず。
一年の中もかくのごとし。
一生の間もまたしかなり。
「かねてのあらまし、みな違ひ行くか」と思ふに、
おのづから違はぬこともあれば、
いよいよ物は定めがたし。
不定と心得ぬるのみ、まことにて違はず。
現代語訳
「今日はあのことをしよう」と思っても、別の急用が先に起こり、それに紛れて一日を終える。待っている相手は差し支えができて来ず、当てにしていなかった人がやって来る。頼みにしていたことは外れ、思いもよらなかったことばかりが実現する。面倒だと思っていたことは何事もなく済み、簡単なはずのことがひどくつらい。毎日が過ぎていく様子は、前もって思い描いていたものとは違う。一年の間もそうであり、一生の間もまた同じである。「前もって立てた見通しはすべて外れていくのか」と思えば、たまたま外れないこともあるので、ますます物事は決めつけられない。ただ、すべては定まらないと心得ておくことだけが真実で、外れることがない。
全244段の目次
底本: 烏丸光広本『徒然草』校訂本文(やたがらすナビ・CC BY-SA 4.0)