そらんじ徒然草

暗き人の人を量りてその智を知れりと思はんさらに当たるべからず

一言でいうと
自分の専門だけを物差しに、他人の知性全体を評価してはならない。
原文
暗き人の、人を量りて、「そのを知れり」と思はん、
さらに当たるべからず。
つたなき人の、碁打ごうつことばかりに、さとく巧みなるは、
賢き人の、この芸におろかなるを見て、
「おのれが智に及ばず」と定めて、よろづの道のたくみ
わが道を人の知らざるを見て、
「おのれ、すぐれたり」と思はんこと、
大きなる誤りなるべし。
文字の法師・暗証あんしようの禅師、互ひに量りて、
「おのれにしかず」と思へる、ともに当たらず。
おのれが境界きやうがいにあらざるものをば、争ふべからず。
是非ぜひすべからず。
現代語訳
愚かな人が他人を推し量り、「あの人の知性はわかった」と思っても、決して当たるはずがない。未熟な人が碁だけは賢く巧みで、賢者がこの芸に疎いのを見て、「自分の知恵に及ばない」と決めつけるようなものだ。あらゆる道の専門家が、自分の道を他人が知らないのを見て「自分のほうが優れている」と思うのは、大きな誤りである。経典を学ぶ僧と、文字に頼らず禅を修める禅師とが互いを測り、「自分には及ばない」と思うのも、どちらも正しくない。自分の領分ではないことを争ってはならず、よしあしを決めてはならない。
全244段の目次
底本: 烏丸光広本『徒然草』校訂本文(やたがらすナビ・CC BY-SA 4.0)