そらんじ徒然草

ある人久我縄手を通りけるに

一言でいうと
平静な時には立派な人でも、心を病めば、周囲には理解しがたい行動をすることがある。
原文
ある人、久我縄手こがなはてを通りけるに、小袖こそで大口着おほくちきたる人、
木造きづくりの地蔵ぢざうを田の中の水におしひたして、
ねんごろに洗ひけり。
心得がたく見るほどに、狩衣かりぎぬの男、二・三人出で来て、
「ここにおはしましけり」とて、
この人を具してにけり。
久我内大臣殿こがのないだいじんどのにてぞおはしける。
尋常よのつねにおはしましける時は、
神妙しんべうにやんごとなき人にておはしけり。
現代語訳
ある人が久我縄手を通った時、小袖の上に大口袴を着た人が、木彫りの地蔵を田の水に浸し、丁寧に洗っていた。わけがわからず見ていると、狩衣姿の男が二、三人現れ、「こちらにいらっしゃいましたか」と言って、その人を連れて行った。その人は久我内大臣殿だったのである。平静でいらっしゃった時は、まことに立派で身分の高い方だった。
全244段の目次
底本: 烏丸光広本『徒然草』校訂本文(やたがらすナビ・CC BY-SA 4.0)