勅勘の所に靫かくる作法今は絶えて知れる人なし
一言でいうと
勅勘を受けた家に靫を掛ける古い作法は廃れ、今では封印に替わった。
原文
勅勘の所に、靫かくる作法、今は絶えて知れる人なし。
主上の御悩、おほかた世の中の騒がしき時は、
五条の天神に靫をかけらる。
鞍馬に、ゆきの明神といふも、
靫かけられたりける神なり。
看督長の負ひたる靫を、その家にかけられぬれば、
人出で入らず。
このこと絶えて後、今の世には、
封を付くることになりにけり。
現代語訳
天皇のとがめを受けた者の家に靫(矢を入れて背負う道具)を掛ける作法は、今ではすっかり廃れ、知る人もいない。天皇がご病気の時や、世の中が広く騒がしい時には、五条天神に靫をお掛けする。鞍馬に「靫の明神」という神があるのも、かつて靫を掛けられた神だからである。看督長(罪人を取り締まる役人の長)が背負った靫をその家に掛けると、誰も出入りしなくなる。この作法が廃れた後、今の世では封を付けるようになった。
全244段の目次
底本: 烏丸光広本『徒然草』校訂本文(やたがらすナビ・CC BY-SA 4.0)