そらんじ徒然草

人の田を論ずるもの訴へに負けてねたさにその田を刈りて取れとて

一言でいうと
道理を捨てて悪事をすると決めた者には、悪事の範囲を守る理由さえない。
原文
人の田を論ずるもの、うたへに負けて、ねたさに、
「その田を刈りて取れ」とて、人をつかはしけるに、
まづ道すがらの田をさへ刈りもてゆくを、
「これは論じたまふ所にあらず。いかにかくは」と言ひければ、
刈る者ども、
「その所とても、刈るべきことわりなけれども、
僻事ひがごとせん』とてまかる者なれば、
いづくをか刈らざらん」とぞ言ひける。
ことわり、いとをかしかりけり。
現代語訳
他人と田の所有を争っていた者が訴訟に負け、悔しさのあまり、「その田の稲を刈り取ってこい」と人を遣わした。すると、その者たちは道中にある田まで次々に刈っていった。「これは争っている田ではない。なぜこんなことをするのか」と言われると、刈る者たちは、「争いの田であっても、刈ってよい道理はない。私たちは『道に外れたことをしよう』と出かけているのだから、どこの田なら刈らないということがあろうか」と答えた。その理屈が実におもしろかった。
全244段の目次
底本: 烏丸光広本『徒然草』校訂本文(やたがらすナビ・CC BY-SA 4.0)