五条内裏には妖物ありけり
一言でいうと
五条内裏の狐は、人に化けきれないまま見つかって逃げた。
原文
五条内裏には妖物ありけり。
藤大納言殿、語られ侍りしは、殿上人ども、
黒戸にて碁を打ちけるに、御簾をかかげて見る物あり。
「誰そ」と見向きたれば、狐、人のやうについゐて、
さしのぞきたるを、「あれ、狐よ」とどよまれて、
まどひ逃げにけり。
未練の狐、化け損じけるにこそ。
現代語訳
五条内裏には化け物がいたという。藤大納言殿が語られた話では、殿上人たちが黒戸の間で碁を打っていた時、御簾を持ち上げて中をのぞくものがいた。「誰だ」と振り向くと、狐が人のようにちょこんと座り、のぞき込んでいた。「あれは狐だ」と皆に騒がれ、慌てふためいて逃げていった。未熟な狐が、人に化け損ねたのだろう。
全244段の目次
底本: 烏丸光広本『徒然草』校訂本文(やたがらすナビ・CC BY-SA 4.0)