そらんじ徒然草

斎王の野宮におはしますありさまこそ

一言でいうと
斎王の野宮や古びた神社には、仏教とは違う清らかで優美な趣がある。
原文
斎王さいわうの、
野宮ののみやにおはしますありさまこそ、やさしく、
おもしろきことのかぎりとは思えしか。
経・仏などみて、
中子なかご」・「染紙そめがみ」など言ふなるもをかし。
すべて、
神の社こそ、捨てがたくなまめかしきものなれや。
もの古りたる森の気色もただならぬに、玉垣たまがきしわたして、
さかき木綿ゆふかけたるなど、いみじからぬかは。
ことにをかしきは、
伊勢いせ賀茂かも春日かすが平野ひらの住吉すみよし三輪みわ貴布禰きふね吉田よしだ大原野おほはらの松尾まつのを梅宮うめのみや
現代語訳
斎王が野宮にいらっしゃる様子は、優美で趣深いことの極みだと思われた。仏教の経典や仏を忌み言葉として避け、それぞれ「中子」「染紙」などと言い換えるそうなのも面白い。総じて神社は、捨てがたい優美さを持つものだ。古びた森の景色も並々ではないうえ、玉垣をめぐらし、榊に木綿を掛けた様子など、すばらしくないはずがない。特に趣深いのは、伊勢、賀茂、春日、平野、住吉、三輪、貴布禰、吉田、大原野、松尾、梅宮の各社である。
全244段の目次
底本: 烏丸光広本『徒然草』校訂本文(やたがらすナビ・CC BY-SA 4.0)