そらんじ徒然草

御国譲りの節会行はれて

一言でいうと
天皇が退位した時こそ、それまで仕えた人々の本心がはっきり表れる。
原文
御国譲みくにゆづりの節会せちゑ行はれて、剣璽けんじ、
内侍所ないしどころ渡し奉らるるほどこそ、かぎりなう心細けれ。
新院しんゐんのおりゐさせ給たまひての春、詠ませ給たまひけるとかや※1
殿守とのもりのとものみやつこよそにしてはらはぬ庭に花ぞ散りしく
今の世の、ことしげきにまぎれて、
院には参る人もなきぞ、さびしげなる。
かかる折にぞ、人のこころもあらはれぬべき。
本文について
  1. ※1おりゐさせ給ひて烏丸本では「おりさせ給ひて」。ほかの諸本・注釈書の本文に従いました。
現代語訳
天皇が位を譲る儀式が行われ、三種の神器である剣と璽、内侍所(神鏡)が新帝へお渡し申し上げられる時ほど、限りなく心細いものはない。新院が退位なさった後の春にお詠みになったという歌がある。「殿守の役人もよそのこととして掃かなくなった庭に、花が散り敷いている」。今の世の中は慌ただしいことに紛れて、院のもとに参上する人もなく、寂しそうである。このような時にこそ、人の本心もきっと表れるにちがいない。
全244段の目次
底本: 烏丸光広本『徒然草』校訂本文(やたがらすナビ・CC BY-SA 4.0)
出典と照合について