そらんじ徒然草

よろづにいみじくとも色好まざらん男はいとさうざうしく

一言でいうと
どれほど立派でも、恋をしない男は、底のない美しい杯のように物足りない。
原文
よろづにいみじくとも、色好いろごのまざらん男は、
いとさうざうしく、玉のさかづきそこなき心地ぞすべき。
露霜つゆじもにしほたれて、所定めずまどひありき、親のいさめ、
世のそしりをつつむに、心のいとまなく、
あふさきるさに思ひ乱れ、さるは独寝ひとりねがちに、
まどろむ夜なきこそをかしけれ。
さりとて、ひたすらたはれたるかたにはあらで、
女にたやすからず思はれんこそ、あらまほしかるべきわざなれ。
現代語訳
何事においてもどれほどすぐれていても、恋をしない男は、ひどく物足りなく、玉でできた杯に底がないような感じがするだろう。露や霜に濡れながら、行く先も定めずさまよい歩き、親のいさめや世間の非難を避けようとして心の休まる暇もなく、あれこれと思い乱れ、それでいて独り寝することが多く、安らかにまどろむ夜もないというのが面白い。だからといって、ひたすら浮ついた好色者になるのではなく、女性から簡単には手に入らない人だと思われるのが、望ましいことである。
全244段の目次
底本: 烏丸光広本『徒然草』校訂本文(やたがらすナビ・CC BY-SA 4.0)