今の内裏作り出だされて有職の人々に見せられけるに
一言でいうと
専門家が見逃した宮殿の誤りを、昔を知る女性の記憶が正した。
原文
今の内裏作り出だされて、有職の人々に見せられけるに、
「いづくも難なし」とて、
すでに遷幸の日近くなりけるに、玄輝門院御覧じて、
「閑院殿の櫛形の穴は、まろく、縁もなくてぞありし」と仰せられける、
いみじかりけり。
これは葉の入りて、木にて縁をしたりければ、
誤りにて直されにけり。
現代語訳
新しい内裏が完成し、儀式や故実に詳しい人々にお見せになったところ、皆が「どこにも問題はない」と言い、天皇が移られる日も間近になっていた。ところが玄輝門院がご覧になり、「閑院殿の櫛形の穴は丸く、縁もなかった」とおっしゃったのは、実に見事なことだった。新しいものは穴に葉形の刳り込みが入っていて、木の縁まで付けてあったので、それが誤りだとして直された。