そらんじ徒然草

今の内裏作り出だされて有職の人々に見せられけるに

一言でいうと
専門家が見逃した宮殿の誤りを、昔を知る女性の記憶が正した。
原文
今の内裏作だいりつくり出だされて、有職いうそくの人々に見せられけるに、
「いづくも難なし」とて、
すでに遷幸せんかうの日近くなりけるに、玄輝門院御覧げんきもんゐんごらんじて、
閑院殿かんゐんどの櫛形くしがたの穴は、まろく、ふちもなくてぞありし」と仰せられける、
いみじかりけり。
これはえふの入りて、木にて縁をしたりければ、
誤りにて直されにけり。
現代語訳
新しい内裏が完成し、儀式や故実に詳しい人々に見せたところ、皆が「どこにも問題はない」と言い、天皇が移られる日も間近になっていた。ところが玄輝門院がご覧になり、「閑院殿の櫛形の穴は丸く、縁もなかった」とおっしゃったのは、実に見事なことだった。新しいものは穴の先が尖っており、木の縁まで付けてあったので、それが誤りだとして直された。
全244段の目次
底本: 烏丸光広本『徒然草』校訂本文(やたがらすナビ・CC BY-SA 4.0)