そらんじ徒然草

光親卿院の最勝講奉行してさぶらひけるを

一言でいうと
食べ終えた膳を御簾の中へ戻す古式の作法は、知らない者には無作法に見えた。
原文
光親卿みつちかきゃう、院の最勝講奉行さいしょうかうぶぎゃうしてさぶらひけるを、
御前おまへへ召されて、供御くごを出だされて、食はせられけり。
さて、食ひ散らしたる衝重ついがさねを、御簾みすの中へさし入れて、
まかり出でにけり。
女房にょうばう
「あなきたな。誰にとれとてか」など申し合はれければ、
有職いうそくの振舞、やんごとなきことなり」と、
かへすがへす感ぜさせたまけるとぞ。
現代語訳
光親卿が院の最勝講(法華経を講じる法会)の運営を務めていた時、院の御前に召され、食事を出され、それをいただいた。食べ終わると、食べ散らかしたままの衝重(食器を載せる膳)を御簾の中へ差し入れ、退出してしまった。女房たちが、「まあ汚い。いったい誰に片づけろというのか」などと言い合ったところ、院は「あれこそ儀式や作法に通じた者の振る舞いであり、尊ぶべきことだ」と、何度も感心なさったという。
全244段の目次
底本: 烏丸光広本『徒然草』校訂本文(やたがらすナビ・CC BY-SA 4.0)