わが身のやんごとなからんにもまして数ならざらんにも子といふもの
一言でいうと
身分の高低にかかわらず、子を持たず、家系を後世に残さない方がよい。
原文
わが身のやんごとなからんにも、まして、
数ならざらんにも、子といふもの、無くてありなん。
前中書王・九条太政大臣・花園左大臣、
みな族絶えんことを願ひ給へり。
染殿大臣も、
「子孫おはさぬぞ、良く侍る。末のおくれ給へるは、
悪きことなり」とぞ、世継の翁の物語には言へる。
聖徳太子の、御墓をかねて築かせ給ひける時も、
「ここを切れ、かしこを断て。子孫あらせじと思ふなり」と侍りけるとかや。
現代語訳
自分が高貴な身分であっても、まして取るに足りない身分であっても、子というものは、ないままでよいだろう。前中書王、九条太政大臣、花園左大臣は、みな一族が絶えることを願われた。染殿大臣も、「子孫がおいでにならないのがよい。末の子孫が先祖より劣ってしまうのは、よくないことだ」と、『大鏡』で世継の翁が語っている。聖徳太子が生前にご自分の墓を造らせた時にも、「ここを切り、あそこを断ち切れ。子孫を残すまいと思うのだ」とおっしゃったとかいう。
全244段の目次
底本: 烏丸光広本『徒然草』校訂本文(やたがらすナビ・CC BY-SA 4.0)