そらんじ徒然草

御産の時甑落すことは定まれることにはあらず

一言でいうと
出産時に甑を落とすのは決まった儀式ではなく、難産の時だけ行う民間のまじないだ。
原文
御産ごさんの時、こしき落すことは、定まれることにはあらず。
御胞衣おんえなとどこほるときのまじなひなり。
とどこほらせたまはねば、このことなし。
下ざまよりことおこりて、させる本説なし。
大原おほはらの里の甑を召すなり。
古き宝蔵はうざうの絵に、いやしき人の子産みたる所に、
甑落したるを書きたり。
現代語訳
高貴な方の出産の時に甑(米などを蒸す器)を落とすのは、必ず行う決まりではない。胎盤が出ずに滞った時のまじないである。滞りなくお産みになれば、この行いはしない。身分の低い人々の間から始まったことで、これといった根拠となる説もない。大原の里から甑を取り寄せるのである。古い宝物庫にある絵にも、身分の低い人が子を産んでいる所で甑を落とす様子が描かれている。
全244段の目次
底本: 烏丸光広本『徒然草』校訂本文(やたがらすナビ・CC BY-SA 4.0)