今様のことどもの珍しきを言ひ広めもてなすこそまたうけられね
一言でいうと
新しい流行を知らない人を仲間内で笑うのは、むしろ野暮で品がない。
原文
今様のことどもの珍しきを、
言ひ広めもてなすこそ、またうけられね。
世に、こと古りたるまで知らぬ人は、心にくし。
いまさらの人などのある時、
ここもとに言ひつけたることぐさ、物の名など、
心得たる同志、かたはし言ひかはし、目見合せ、
笑ひなどして、心知らぬ人に心得ず思はすること、
世なれず、よからぬ人の、必ずあることなり。
現代語訳
当世風の新しい物事を珍しがって、言い広めてもてはやすのも感心できない。世間で古びてしまうほどになるまでそれを知らない人には、かえって奥ゆかしさがある。新参の人などが居合わせた時、このあたりだけで使われる言い回しや物の名などを、事情を知る者同士が端々だけ言い交わし、目を見合わせて笑うなどして、事情を知らない人にわけがわからないと思わせることは、世慣れず品のない人が必ずすることである。
全244段の目次
底本: 烏丸光広本『徒然草』校訂本文(やたがらすナビ・CC BY-SA 4.0)