何ごとも入りたたぬさましたるぞよき
一言でいうと
本当にわかっている人ほど、聞かれないことを知った顔で語らない。
原文
何ごとも入りたたぬさましたるぞよき。
よき人は、知りたることとて、さのみ知り顔にやは言ふ。
片田舎よりさし出でたる人こそ、よろづの道に心得たるよしの、さしいらへはすれ。
されば、世に恥づかしきかたもあれど、みづからも、
「いみじ」と思へる気色、かたくななり。
よくわきまへたる道には、必ず口重く、
問はぬ限りは言はぬこそいみじけれ。
現代語訳
何事にも深く入り込んでいないように振る舞うのがよい。教養のある人は、知っていることだからといって、そう何でも知った顔で話すだろうか。片田舎から出てきた人に限って、あらゆる分野を心得ているように口を挟むものだ。そのため、聞くこちらが気後れするほど立派に思える面もあるのだが、自分を「たいしたものだ」と思っている様子は見苦しい。よくわきまえている分野については必ず口が重く、聞かれないかぎり言わない人こそ立派である。
全244段の目次
底本: 烏丸光広本『徒然草』校訂本文(やたがらすナビ・CC BY-SA 4.0)