そらんじ徒然草

竹林院入道左大臣殿太政大臣にあがり給はんに

一言でいうと
頂点まで登りつめず余地を残すことが、破滅を避ける道である。
原文
竹林院入道左大臣殿ちくりんゐんにふだうさだいじんどの太政大臣だいじやうだいじんにあがりたまはんに、
なにのとどこほりかおはせんなれども、
「珍しげなし。一上いちのかみにてやみなん」とて、
出家し給ひにけり。
洞院左大臣殿とうゐんさだいじんどの、このことを甘心かんしんし給ひて、
相国しやうこくの望みおはせざりけり。
亢竜かうりようの悔いあり」とかやいふことはべるなり。
月、満ちては欠け、もの、盛りにしては衰ふ。
よろづのこと、先のつまりたるは、破に近き道なり。
現代語訳
竹林院入道左大臣殿は、太政大臣に昇進するのに何の妨げもなかったのだが、「それでは珍しくもない。左大臣の首席のままで終わろう」と言って出家なさった。洞院左大臣殿もこの振る舞いに感心されて、太政大臣になる望みをお持ちにならなかった。「高く昇りきった竜には後悔がある」という言葉があるそうだ。月は満ちれば欠け、物事は盛りを迎えれば衰える。何事も、その先に進む余地がなくなれば、破滅に近づく道なのである。
全244段の目次
底本: 烏丸光広本『徒然草』校訂本文(やたがらすナビ・CC BY-SA 4.0)