そらんじ徒然草

ある者小野道風の書ける和漢朗詠集とて持ちたりけるを

一言でいうと
偽物の疑いを指摘されても、それを希少さの証拠だと思い込む人がいる。
原文
ある者、
小野道風をののたうふうの書ける和漢朗詠集わかんらうえいしふとて持ちたりけるを、
ある人、
「御相伝、浮けることにははべらじなれども、
四条大納言撰しでうのだいなごんえらばれたるものを、道風書かんこと、
時代やたがひ侍らん。おぼつかなくこそ」と言ひければ、
「さ候へばこそ、世にありがたきものには侍りけれ」とて、
いよいよ秘蔵ひさうしけり。
現代語訳
ある人が、小野道風の筆による『和漢朗詠集』だというものを持っていた。別の人が、「代々伝わった由来は根拠のないものではないでしょうが、四条大納言が選んだ書物を小野道風が書いたというのは、時代が食い違っているのではありませんか。どうも疑わしいことです」と言った。すると持ち主は、「そうであるからこそ、世にも珍しいものなのです」と言って、ますます大切にしまい込んだ。
全244段の目次
底本: 烏丸光広本『徒然草』校訂本文(やたがらすナビ・CC BY-SA 4.0)