そらんじ徒然草

常磐井相国出仕し給ひけるに勅書を持ちたる北面あひ奉りて

一言でいうと
天皇の命令を携える者は、自分より高位の人にも礼を譲ってはならない。
原文
常磐井相国ときはゐのしやうこく出仕しゆつしたまひけるに、
勅書ちよくしよを持ちたる北面ほくめんあひ奉りて、馬より下りたりけるを、
相国、後に、
「北面なにがしは、
勅書を持ちながら下馬げばはべりし者なり。かほどの者、
いかでか君につかうまつり候ふべき」と申されければ、
北面を放たれにけり。
「勅書を馬の上ながら、ささげて見せ奉るべし。下るべからず」とぞ。
現代語訳
常磐井相国が宮中へ出仕なさる途中、天皇の命令書を持った北面の武士が行き会い、馬から降りた。相国は後になって、「北面の何某は、勅書を持ちながら私に会って下馬した者である。この程度の者が、どうして天皇にお仕えできようか」と申し上げたので、その北面の武士は職を解かれた。「勅書は馬上のまま高く掲げて私に見せるべきであり、下馬してはならなかった」ということである。
全244段の目次
底本: 烏丸光広本『徒然草』校訂本文(やたがらすナビ・CC BY-SA 4.0)